Netflix映画『マリッジ・ストーリー』結婚カウンセラーがこぞって観る映画
ノア・バームバック脚本・監督のNetflix映画『マリッジ・ストーリー』を観終ったばかりですが、あのシーンやこのシーンをもう一度観かえしたい!と思わせてくれる映画でした。
2020年アカデミー賞では、数々の部門でノミネートされ、この作品では敏腕離婚弁護士を演じた『ビッグ・リトル・ライズ』のローラ・ダーンがアカデミー賞 助演女優賞を受賞した作品です。
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバー演じる夫婦が、幸せいっぱいだった生活の中のちょっとした気持ちのすれ違いやコミュニケーション不足から離婚に至ってしまいます。一見どこにでもあるお話かもしれませんが、バームバックが描く世界はとても繊細で、人間の心の揺れを細かく描写しており、離婚経験があるなしに関わらず、彼らの痛みにとても共感することができます。
そして、なんと結婚カウンセラーが勉強のためにこぞって観ている、という噂も!泣いて笑って、そして愛とは、結婚とは、を考えてしまう映画です!
写真出典:Netflix公式サイト
『マリッジ・ストーリー』作品情報
原題:Marriage Story
公開年:2019年
監督:ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン
上映時間:137分
配信元:Netflix
『マリッジ・ストーリー』あらすじ
チャーリー・バーバー(アダム・ドライバー)は、ニューヨークで活躍する舞台監督。そして、妻ニコール(スカーレット・ヨハンソン)は、彼が演出する舞台の看板女優。
二人の結婚生活は上手くいっておらず、カウンセリングを受けた。セラピーの一環としてお互いの好きな点を書き出して読み上げようと提案を受けるが、ニコールは書き出したものの馬鹿らしくなり途中でカウンセリングルームを飛び出し、離婚は決定的となる。
そんな中ニコールは、ロサンジェルスでテレビの仕事をゲットしたため、劇団を辞め母親が住むウエストハリウッドへ8歳の息子ハリーと引っ越す。円満な離婚を望んでいた二人だが、ニコールが敏腕離婚弁護士(ローラ・ダーン)を雇ったことから、全てが加速していく。
(c)Netflix
『マリッジ・ストーリー』キャスト
スカーレット・ヨハンソン(役名:ニコール・バーバー)
ニコールを演じるのは、ハリウッドで一番稼ぐ女優といわれるスカーレット・ヨハンソン。『ロスト・イン・トランスレーション』、『真珠の耳飾りの少女』、『マッチポイント』、『それでも恋するバルセロナ』、『アイアンマン2』、『アベンジャーズ』シリーズ、『her/世界でひとつの彼女』、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』、『キャプテン・アメリカ』シリーズ、『LUCY/ルーシー』、『ジョジョ・ラビット』など数々のヒット作品に出演。
私がこの中で一番お勧めするのは、ウッディ・アレン監督作の『マッチポイント』。この作品でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされ、以後はウッディ・アレンの監督作の常連となります。これは私の主観ですが、本作品の脚本監督のノア・バームバックもウッディ・アレンの影響を多く受けているような気がします。
アダム・ドライバー(役名:チャーリー・バーバー)
アダム・ドライバーと言えば誰もが『スター・ウォーズ』シリーズのカイロ・レン役を思い出すでしょう。私など、アダムの名前を聞くとあの黒いマント姿をすぐ思い浮かべてしまいます。
最近では、2018年の映画『ブラック・クランズマン』のフィリップ・ジマーマン刑事役でアカデミー助演男優賞・ゴールデングローブ賞 助演男優賞・英国アカデミー賞 助演男優賞にノミネートされました。
『マリッジ・ストーリー』感想(ネタバレなし)
写真出典:The Gurdian
この離婚劇の興味深いところは、お話がどんどん進んでいってもニコールもチャーリーどちらとも悪者にはなりません。(チャーリーが劇団スタッフと一晩の間違いをおかしたというのが後で分かりますが、それも離婚が決定的になってからです。)どちらかが長年浮気をしていたとか、アル中だとか、ギャンブル中毒だとか、暴力を振るうだとか、何も決定的な離婚の理由が観ている私たちにはすぐ分かりません。
なので、最初のハッピーな結婚生活ぶりを観たばかりなので、一瞬「えっ?なんで離婚するの?」と訳が分からなくなります。
これって私にとっては少しデジャブだったんですよね。
私の友人が離婚することにした、と言ったとき、思わず「えっ?なんで?あんなに仲良かったのに!」と言ってしまったんです。つまり、離婚の理由などというものは、よく聞くフレーズですが、「当人しか分からない」のです。
そして、観ている私たちはその「当人しか分からない理由」を知りたくてぐいぐい映画に引き込まれていきます。
あんなに仲が良かった二人がなぜ?幸せそうだったニコールにどんな気もちの変化が出たのか?(映画の中ではあまりクリアにされてませんが、ニコールの気持ちの変化が離婚への一歩だったと思います。)
写真出典:The Gurdian
また、離婚協議というものは決してたやすいものではないと簡単に想像がつきますが、経済的にも精神的にも大変な苦痛を強いられる、ということを映画の中で観ている私たちは痛いほど知ることになります。両サイドの弁護士が勝ちたいがために、相手のマイナス面や過去のたわいない間違いなどを盾に議論を交わします。
子供を育てるのにふさわしくない、慰謝料をもらう価値がない、などとお互いを徹底的に傷つけあいます。仕舞いには、ほとんどの離婚経験者が、私たちなぜ結婚したんだろう、と出会った当時のことなど忘れてしまう。それくらい離婚協議というものは醜くなるものです。
しかし、それと同時に泥沼離婚劇は、お互いが顔を突き合わせお互いの気持ちをさらけ出すのに最適な場所となります。それは、長年知らなかったお互いの本音、つまり、ニコールが結婚生活の中で何を感じていたのか、何が本当はしたかったのか、というものを観ている私たちは知ることにもなります。そして、それはきっとニコール自身もその時に初めて自分の気持ちに正直になれた瞬間でもあったのかもしれません。
写真出典:The Gurdian
中盤のニコールとチャーリーが気持ちをぶつけ合うシーンでは、ヨハンソンとドライバーの名演技を涙なくしては観れないのですが、バームバック監督はユーモアも忘れてはいません。
いくつかのユーモアに溢れたシーンは、彼の監督作品『イカとクジラ』を彷彿させます。
そして、ローラ・ダーン演じるニコール側の敏腕離婚弁護士役のいくつかのシーンも笑いが止まらなかったです。『ビッグ・リトル・ライズ』のキャラクターに少し似ているような気もしますが、ダーンの演技はトロント国際映画祭で上映中にも関わらず拍手喝采を受けたようです。
また、絶対注目して欲しいシーンは、ニコールの母親の家でニコールが妹に、チャーリーに離婚に関する書類を渡すように頼むシーンです。(アメリカではこのような裁判に関する書類は第3者が当人に渡さないといけないらしいです。)
私は離婚届を渡す場面に立ち合った経験はないですが、ニコールの妹が「あ~、緊張する~」と言ってるのを聞いて、みょうにこちらまでドキドキし共感できてしまうほど、セリフや演技の全てがリアリティに溢れていました。そして、その中にもたくさんユーモアが詰まってて大笑い。
最後の方でチャーリーが劇団員の前で"Being Alive"を歌うシーンがあるのです。歌詞が"someone to hold me too close, someone to hurt me too deep."で、訳すと「私を近くでギュッと抱きしめる人、私を深く傷つける人」という意味ですが、離婚する妻(相手)というのは、ラブ&ヘイト、まさにその通りなのかもしれませんね。
本作品『マリッジ・ストーリー』は、ここまで傷つけあうのなら結婚なんて最初からしない方がいいのではないか、と結婚の制度って何なのかについて、考えさせられる映画でしたが、最後のシーンを観ると、それでも人を愛することにはさまざまな形があって、愛することで人間をひとまわりもふたまわりも成長させてくれるものなのかもしれない・・・そんなことを思わせてくれるビター&スウィートなエンディングでした。
Netflixでご覧になれます。
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