映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』あらすじ、キャストの紹介、ネタバレ感想 辛い中で生き延びていくためのヒントがたくさん詰まっている映画
本作品は「おちゃのじかんにきたとら」などの絵本作家として知られるジュディス・カーが自身の亡命生活を8歳の息子に伝えたいという想いから書いた原作本「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」(英語題:When Hitler Stole Pink Rabbit)を映画化したものです。
ヒトラーという言葉が題名に含まれているので、かなり悲惨な話を想像していたのですが、映画の最後には希望と勇気に満ち溢れた気持ちになりました。
ここでは、映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』のあらすじ、キャストの紹介、そして、ネタバレ感想をお届けします。
写真引用:映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』公式サイト
映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』作品情報
原作:ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ 著:ジュディス・カー
原題:Als Hitler das rosa Kaninchen stahl
公開年:2019年
監督・脚本:カロリーヌ・リンク
出演:リーバ・クリマロフスキ、オリバー・マスッチ、カーラ・ジュリ、マリヌス・ホーマン、ウルスラ・ベルナー
上映時間:119分
配給:彩プロ
映倫区分:G
映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』あらすじ
1933年2月ベルリン。ヒトラーの弾圧が激しくなる少し前。9歳の少女アンナの人生は激変しようとしていた。
アンナの父、アルトゥア・ケンパーは著名なユダヤ人で辛口のジャーナリスト。普段からヒトラーを批判していた父は長年の友人からのアドバイスを受け、ナチスから逃れるため家族全員でスイスへ亡命することに。
アンナは母親から「2冊の本と1つのぬいぐるみだけを持っていくように」と言われ、もらったばかりの犬のぬいぐるみを持っていくべきか、長年を過ごしたももいろのうさぎのぬいぐるみを持っていくべきか悩む。
いつか家に帰ってくることを考えながら、ももいろのうさぎを残していくことに決めた。もう2度とももいろのうさぎのぬいぐるみと会えないとは知らずに・・・
映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』キャスト
リーバ・クリマロフスキ(役名:アンナ)
【明日公開】『ヒトラーに盗られたうさぎ』
第二次世界大戦前夜にドイツから一縷の希望を求めて亡命するユダヤ人家族の姿を9歳の少女アンナの視点から描く。「おちゃのじかんにきたとら」で知られる世界的絵本作家ジュディス・カーの自伝的小説をベースにした、みずみずしい感性の映画。 pic.twitter.com/8izCJNeLrg— 京都シネマ (@kyotocinema) December 10, 2020
役柄:9歳の時に家族とスイスへ亡命。
1000人ものスカウトから見出された若き女優。本作品がデビュー作とは思えないほどの演技力で、こういう子が天才っていうんでしょうね。
オリバー・マスッチ(役名:アルトゥア・ケンパー)
主人公のアンナの父親役のオリヴァー・マスッチは本作ではヒトラーを痛烈に批判する演劇批評家ですが、『帰ってきたヒトラー』ではヒトラーを演じていましたね。#ヒトラーに盗られたうさぎ pic.twitter.com/37rNBLr37q
— 映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』公式 (@pinkrabbitmovie) December 1, 2020
役柄:辛口の劇評家。ヒトラーに批判的な意見を述べていたため、”リスト”に載っているとされていた。
2015年のブラックコメディ映画 『帰ってきたヒトラー』のヒトラー役で一躍有名に。
カーラ・ジュリ(役名:ドロテア・ケンパー)
11/27(金)より公開の映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』は各機関より推薦を受けました!
・文部科学省特別選定
(青年、成人、家庭向き)
・文部科学省選定
(少年向き)
・東京都推奨映画
・年少者映画審議会推薦#ヒトラーに盗られたうさぎ pic.twitter.com/aOxzMm7YmN— 映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』公式 (@pinkrabbitmovie) November 26, 2020
役柄:アルトゥアの妻。ピアニスト/作曲家。
スイスのアンブリという村で育ったためドイツ語、イタリア語、英語の三カ国語が堪能。世界的に活躍している女優さん。最近では、名優ジュディ・デンチと映画『Six Minutes to Midnight』で共演を果たしています。
マリヌス・ホーマン(役名:マックス・ケンパー)
久々に心あたたまる映画をみました。戦争によって変わる家族や周りの人との関係が、いろんな問題が起きるんだけど、主人公の女の子がぜんぜん負けないんですよね。
「ヒトラーに盗られたうさぎ」 ヒトラーの台頭により家族4人の逃亡の旅が始まる https://t.co/XeMkaqLelU @Smooth Life Magazineより
— レオン (@leung27) October 29, 2020
役柄:アンナの優しい兄。
2016年公開の大ヒットコメディ映画『はじめてのおもてなし』に出演。
映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』ネタバレ感想
本作品は約50年以上も前に書かれた絵本「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」を映画化したものですが、お恥ずかしながら一度も読んだことがありませんでした。
欧米では昨年2019年に公開され、大ヒットを記録した映画でしたので、観る気は十分にあったのですが、題名に「ヒトラー」の文字を見た瞬間に、かなり悲愴なお話なんだろう・・・と想像し、ここのところストレス気味だった私は観るのを伸ばし伸ばしにしていました。
ある日曜日の午後、愛犬と森林を1時間あまり散歩しすっかりリフレッシュされた私は、映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』を観始めたところ、しょっぱなからあまりの淡々とした描写に拍子抜けするほどでした。
お話はナチスが台頭し始める直前の1933年ベルリンで子供達がコスプレをした感謝祭のパーティの場面からはじまります。もちろん、ヒトラーの影響を子供たちまでもが受け始めているのは確かで、数人の男の子がヒトラー親衛隊の格好をコスチュームに選んでいたりします。
そして、主役のアンナも家ではヒトラーのように口ひげをつけて片手を掲げて「ユダヤ人との戦いとはすなわち排除だ」とふさげて言い、兄が「僕らはユダヤ人だろ?」とつっこんでいたりする場面がとてもリアリスティックでした。
この頃は、まだ誰もがヒトラーの怖さを知らず、プロパガンダに踊らされ、実際にヒトラーのことを指示する熱狂的な国民がたくさんいたのです。しかし、著名なユダヤ人たちは暗黒の時代が忍び寄るのを感じており、アンナの父親もその1人。
日ごろから辛口の批評家ジャーナリストとして知られるアンナの父親は、ヒトラーに対する批判を堂々とラジオや新聞などで繰り返し述べていました。
警察に所属する友人から、ヒトラーが政権を握ればヒトラーに批判的な意見を述べていた人物は抹殺されるという事を聞き、その人物リストに名を連ねている父親は家族全員で亡命することにします。
そして、それは公には知られていけない秘密での行動。万が一ナチスの親衛隊などに悟られ、パスポートを取り上げられたら最後。
この時の描写がある意味とても緊迫感がありましたね。
大好きなぬいぐるみ、そしてナニーのハインピーとのお別れの場面が描かれ、哀しい中にも「いつかまた会える、家に戻ってこれる」とアンナが希望を持っていることから、淡々と描かれています。
アンナがカレンダーを作りながら、ベルリンの家に帰れるまで日ごとにバッテンをつけていくの。と言っている場面も、観ていて切なくなりましたね。
よく「辛いときに無邪気な子供に救われた」と言いますが、この映画から悲愴さが感じられないのは、9歳のアンナの目線から描かれているからかも知れません。
そして、アンナという女の子がとても逞しくユーモアに溢れた性格なんですよね。アンナだけでなく、父親も母親も常に前向きでユーモアを忘れず生きているのですが、アンナの逞しさは母親譲りかもしれません。
パリで家賃もまともに払えず食うものにも困る日々の中、父親が以前批判したドイツ出身の劇作家にばったり会いお茶に招待されます。母親はきっと子供達に食べさせるものがたくさんあるだろう・・・と父親には言わずに遊びに行きます。
たくさんのお菓子を食べ、ピアノを演奏し、いらなくなった服や本を貰い、意気揚々と家に帰ると、それを見た父親は「自分達は物乞いではない!」と激怒します。
すると、母親は「子供達は本が必要だし食べ物が必要だし、他にたくさん必要なものがある。もともと貧しい子供達に寄付するものだったのだから、私達がもらって何が悪いの!現実を見て!」と言います。
この母親の開き直りに、正直感動しました。
プライドをかなぐり捨てて、他人にどう思われようと、生きるために今するべきことは何なのか?を考える。
昨今、この物に溢れた日本の現代社会では信じられないような飢餓死のニュースを目にすることが時々あります。
その度に思うのです。なぜ、声を上げられなかったのか?なぜ、助けを求められなかったのか?
それは、無意味なプライドが原因だったのかもしれません。
アンナたちが遊びに行ったお金持ちの家の子達は「どうせ貧乏な子たちにあげるから」と言います。そこでアンナが気にせずに「私たちは貧乏よ。ちょうだい!」って言うのですが、それが言えるか言えないかで生き残れるかどうかの差がでるような気がします。
確かに、暗い暗い闇の中にいると助けを求める元気さえもなかったりします。
アンナたちの暮らしもどんなにあがいても貧乏から脱出出来ず、大好きだったユリウス叔父さんがベルリンでの苦境に耐えられず自殺をしたという哀しい知らせを受けたりし、苦境に立たされます。
そんな中、アンナがフランス語の作文コンクールで優勝したり、父親の脚本が映画会社に買ってもらえたりとやっとフランスでの暮らしに明るい兆しが見え始めた頃、一家はロンドンへ引越すことにします。
ここで大事なのは、きっとこの家族は、明るい兆しが見え始めるまで、毎日目の前にあることを淡々とやったからだ、と思うのです。
父親が子供達に「もう二度と(ドイツの)家には戻れないかもしれない。それでも、色々な場所に住むってことは、それはそれで良いことだったりする。」というようなことを言うのですが、この台詞に気持ちが少し楽になりました。
こうであらなければいけない、こうしたい、でもどんなに頑張ってもその想いは叶わない。
そんな時に、暗闇の中にロウソクを灯しこれはこれで悪くないね、って言えると人間は幸せを感じるのかもしれません。
アンナと兄のマックスはも、ここまでくるとイヤイヤながら”なんとかなるさ”という心持ちです。
フランスで新しい言語を習得し、慣れない文化や貧乏を乗り越えた、という経験があるから、私達はまたそれを新しい土地で繰り返して乗り越えるだけ。という・・・なんとも逞しいものです。
まとめ
2020年年末、コロナ禍で明るいニュースがなく、気が滅入るような毎日かもしれません。
この映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』は、ヒトラーや戦争の悲惨さを伝える映画というより、辛い中で生き延びていくためのヒントがたくさん詰まっている映画だと思います。
観終わった後に、希望に満ち溢れた気分になること間違いなし!オススメな映画です!!
映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』は、2020年11月27日より全国順次公開!
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