映画『パブリック 図書館の奇跡』ネタバレ感想 エミリオ・エステベスが11年かけて作った映画!

映画『パブリック 図書館の奇跡』

映画『パブリック 図書館の奇跡』(原題:The public)は、監督・脚本・製作、そして主演をエミリオ・エステベスが務め、なんと11年間の歳月をかけて完成させたものです。

ソルトレイクシティの公共図書館の元副理事が書いたエッセイにインスピレーションを受けて書かれた脚本で、内容はリアリティにあふれており、深く考えさせられる物語です。

ここでは、映画『パブリック 図書館の奇跡』のあらすじ、キャストの紹介、実際に観たネタバレ感想、そして映画の元となったエッセイについてもお話したいと思います。

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映画『パブリック 図書館の奇跡』作品情報

原題:The Public
公開年:2018年

監督・脚本:エミリオ・エステベス

出演者:エミリオ・エステベス、アレック・ボールドウィン、クリスチャン・スレーター、ジェフリー・ライト、マイケル・ケネス・ウィリアムズ

上映時間:119分

配給:ロングライド

映倫区分:G

映画『パブリック 図書館の奇跡』あらすじ

真冬のアメリカ・オハイオ州シンシナティは連日氷点下を記録しており、既にホームレスの凍死者が出ていた。

公共図書館で働く真面目な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)は、図書館の常連の利用者であるホームレス、ジャクソン(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)から思わぬことを告げられる。

「俺たちは凍死してしまう。一晩ここに泊めてくれ」

大寒波の影響で市のホームレスシェルターが満杯なため行き場がない彼らは総勢約70名。”図書館は緊急時の避難所であるべきだ”とする平和的な占拠であり、それを手助けすることにしたスチュアートであったが事態は急速に悪化。

市長選前のパブリシティに利用しようと企む検察官やメディアの真実でない報道によって、スチュアートの暗い過去が暴かれ、人質容疑者に仕立て上げられてしまう。

やがて警察の機動隊が出動し、最後にスチュアートとホームレスたちが決断した驚くべき行動とは……。

映画『パブリック 図書館の奇跡』キャスト

エミリオ・エステベス(役名:スチュアート・グッドソン)

エミリオ・エステベス
写真出典:映画『パブリック 図書館の奇跡』公式サイト

役柄:シンシナティの公共図書館で働く図書館員。とても生真面目。


ニューヨーク出身、1962年生まれ。

苗字は違いますが、エミリオはマーティン・シーンの息子、そして問題児チャーリー・シーンの兄になります。エミリオは父親の七光りと呼ばれるのを懸念しマーティンの本名”エステベス”を使用したそうです。*1

エミリオは1980年代後半の青春映画でロブ・ローたちと活躍し、甘いマスクで本当にカッコよかったですが、当時はマーティンとチャーリーと血縁だとは気づきませんでした。

彼の代表作といえば1992年の映画『飛べないアヒル』でその後も2作作られ大ヒットを飛ばし興行成績的にも大成功を収めました。*1 父親のマーティンと共演することも多く、映画『The War at Home』、テレビシリーズ「ザ・ホワイトハウス」などに出演しています。

最近は長編映画監督としても活躍しており、2006年映画『ボビー』ではゴールデングローブ最優秀賞にノミネートされました。

映画『パブリック 図書館の奇跡』感想

映画『パブリック 図書館の奇跡』
写真出典:映画『パブリック 図書館の奇跡』公式サイト

本作品、エンタメ性はゼロですが映画を観終わって、人の優しさに触れたような幸せ気持ちになれたと同時に無力感にも襲われました。

このご時勢、簡単に触れてはいけないような問題が多く、それはポリティカル・コレクトネスという考え方が浸透したせいもあるかと思います。人種・民族・宗教などの差別や偏見がタブーとされたがために、そちらにばかり目がいって、弱者に対するケアが疎かになった感は否めません。

だからこそ、弱者の代表であるホームレス問題=映画『パブリック 図書館の奇跡』は、迫り来ている現実問題なのです。

クライマー事件を彷彿

本作品は、まず図書館、そして図書館員のスチュワートとセキュリティのエルネストが訴えられたというストーリーラインから始まります。多くの利用者からの苦情を受けたことを理由に体臭がひどいホームレスを図書館から退館させたのですが、2007年でアメリカで起きた「クライマー事件」を思い出しました。

利用規則を不服としたホームレス、R.クライマーが起こした訴訟ですが、最終的には利用者のために館内を安全な場に保つという目的に合致し、かつ差別的でない利用規則であれば問題ない、とするもので図書館側の勝訴でした。(結果的には和解という形でしたが)

しかし、何とも皮肉ですよね。

この後、今度は図書館を占拠したホームレスの利用者を退館させなかったことで、今度は図書館員スチュワートは犯罪人扱いされるのですから、勝ちようが無いよ!と私がスチュワートだったら叫びたくなったでしょう。

図書館はいったい誰のもの?

物語は、シンシナティの公共図書館で閉館後にホームレスたちが退出を拒むというところからドラマチックになってきます。なぜ彼らが退出を拒むのかというと、単純に”めちゃくちゃ寒くて凍死するから!”という理由です。連日の氷点下でホームレスシェルターは満員で、路上で真冬に寝るということは生死問題を意味するのです。

そして、仕舞いには警察は機動隊を呼ぶわけですが、この時思うのです、図書館は一体だれのものなのか?

映画は実話に基づくものではありませんが、ある意味”図書館で毎日起こっていることに近い”でしょう。

そして、図書館員スチュワートに共感した司書さんたちも多いでしょう。エミリオ演じるスチュワート・グッドソンは、図書館主任であり、ホームレスたちを可哀想に思いいつ何とかして助けたいと常日頃から思っているのですが道が見えない。しかし、重要なのは、スチュワートが昔アル中でホームレスだった、という点です。

豪華な脇役たち!

映画『パブリック 図書館の奇跡』
写真出典:映画『パブリック 図書館の奇跡』公式サイト

映画としては、この脇役たちであと三つくらい映画が作れるんじゃないかというほどの豪華ラインナップ

適役(必要悪)として検察官で市長選当選を狙うクリスチャン・ベイル。そして真実を確認せずに誤報道をするリポーターにガブリエル・ユニオン。スチュワートの気持ちを理解しつつも仕事を全うしようとする警察官にアレック・ボールドウィン。

そして、私の大好きな「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」に出演していたジェフリー・ライトとマイケル・ケネス・ウィリアムズ、といった具合に脇をしっかり固めた監督・エミリオです。

インスピレーション

エミリオによると、インスピレーションは、ソルトレイクシティ公共図書館の元副理事、チップ・ワードさんがロサンゼルス・タイムズに寄稿したエッセイ“What They Didn’t Teach Us in Library School: The Public Library as an Asylum for the Homeless,”から来ているそう。*2

ソルトレイクシティ公共図書館では、精神病を抱えたホームレス、ドラッグ依存症のホームレスなど数々の問題を抱えたホームレスの面倒を見ていました。

図書館は公共の場としてホームレスの日中のシェルターとなったことで、図書館員たちはホームレスとソーシャルワーカー、メディカルプロフェッショナル、そして警察官らの調整役となり、その彼らの苦労や実情をエッセイにしたのが現場で実情をよく知るチップさん。

映画の最後の方で、ホームレスが全員で裸になったり、歌を歌ったり、と言った演出は、視聴者受けを狙った感は否めませんが、この答えが見えない現実問題に映画として区切りをつけるためのものであったかと思います。

まとめ

ホームレスと図書館問題は、ホームレス問題の入り口に過ぎません。

自分は弱者になんか絶対にならないと思っている人が多いと思います。私もその1人。しかし、ホームレスの人の殆どが昔は仕事を持っていたし、家族がいたし、家も持っていたのです。それを考えると正直怖くなりますね。

離婚、家庭内暴力、虐待といった家庭環境、または経営失敗、リストラ、借金などの金銭的問題は、意外にも誰にでも起こりうる問題で、現代社会に住む私たちは簡単に弱者(ホームレス)になりかねないのです。

この映画『パブリック 図書館の奇跡』は、普段はホームレスのことなんて考えたことがない、そんな私たちに対して問題提起をしてくれたのは間違いなしです。

映画館の帰りに雑誌"ビッグ・イシュー”を販売している人を見かけたら、ぜひ購入してあげましょう。小さな行動の積み重ねがきっと弱者であるホームレスを助けることに繋がると信じています。

映画『パブリック 図書館の奇跡』は、2020年7月17日(金)より全国順次公開。

参考:
*1 https://www.theguardian.com/film/2020/jan/10/emilio-estevez-brat-pack-will-be-on-my-tombstone
*2 http://www.tomdispatch.com/post/174799/ward_how_the_public_library_became_heartbreak_hotel