映画『コリーニ事件』現実に政治家を動かした物語!あらすじ、キャスト、ネタバレ感想 

コリーニ事件

映画『コリーニ事件』は、2011年に出版された大ベストセラー小説「コリーニ事件」が元になっており、この原作の作家自身はドイツで著名な弁護士ということで、きっと臨場感溢れる作品だろうと思い詳しい予備知識なしに映画『コリーニ事件』を鑑賞しました。

ここでは、映画『コリーニ事件』のあらすじ、キャスト、ネタバレ感想、そして法律の落とし穴・ドレーアー法とは何かを解説します。

(C)2019 Constantin Film Produktion GmbH

映画『コリーニ事件』作品情報

原作:「コリーニ事件」著:フェルディナント・フォン・シーラッハ

独原題:Der Fall Collini

英原題:The Collini Case

公開年:2019年

監督:マルコ・クロイツパイントナー

脚本:クリスティアン・ツバート ロバート・ゴールド イェンス=フレドリク・オットー

出演:エリアス・ムバレク、アレクサンドラ・マリア・ララ、ハイナー・ラウターバッハ、フランコ・ネロ

上映時間:123分

配給:クロックワークス

映倫区分:G

映画『コリーニ事件』あらすじ

ある日、大手企業のトップがホテルのスイートルームで射殺された。
容疑者は、初老のイタリア系の男だが、動機については一切語らない。
トルコ系移民出身の新米弁護士カスパー・ライネンは、その殺人事件の国選弁護人に選ばれ喜んだのも束の間、被害者は長年の恩人だったのである。
事件の証拠品の中から容疑者の過去を遡るにつれて動機が見えてくるが、それはドイツ司法のスキャンダルへと発展し・・・

映画『コリーニ事件』キャスト

エリヤス・エンバレク(役名:カスパー・ライネン)


写真出典:映画『コリーニ事件』公式サイト

役:弁護士資格試験をパスしてまだ3ヶ月の新米弁護士。両親が離婚し父親とは2歳の頃から疎遠中、裕福なリハンス・マイヤーの孫と友達になり世話になる。


西ドイツ・ミュンヘン出身、1982年生まれ。
母親の国籍を選びオーストリア人。
2001年『過激GIRLS☆GIRLS』に初出演。
2006年~2008年テレビシリーズ"Türkisch für Anfänger"で一躍お茶の間の顔となる。
2013年、映画『くたばれゲーテ』主演、大ヒットとなる。

アレクサンドラ・マリア・ララ(役名:ヨハナ・マイヤー)

コリーニ事件
写真出典:映画『コリーニ事件』公式サイト

役:殺されたハンス・マイヤーの孫。カスパーとは、ティーン時代からの友人で家族が交通事故で死後疎遠になるが、この事件で再会。


ルーマニア出身、1978年生まれ。
11歳から活躍する子役出身。2004年、アカデミー国際長編映画賞ノミネート作品『ヒトラー 〜最期の12日間〜』でトラウデル・ユンゲ役を演じて高い評価を受ける。
2007年、フランシス・フォード・コッポラ監督から指名を受け『コッポラの胡蝶の夢』に出演。
2008年にはカンヌ国際映画祭の審査員に選ばれる。

ハイナー・ラウターバッハ(役名:リヒャルト・マッティンガー)

コリーニ事件
写真出典:映画『コリーニ事件』公式サイト

役:ベテラン検事。新米弁護士カスパー・ライネンはかつての教え子。ハンス・マイヤー事件を担当する。


ドイツ・ケルン出身、1953年生まれ。
代表作、1994年『ふたりのロッテ』、2012年『ガーディアン』。最近では2016年、『はじめてのおもてなし』が記憶に新しい。

フランコ・ネロ(役:フィップリツィオ・コリーニ)

コリーニ事件
写真出典:映画『コリーニ事件』公式サイト

役:ハンス・マイヤーを射殺した容疑者。


イタリア出身、1941年生まれ。
1964年『私は彼女をよく知っていた』で映画デビューし、マカロニ・ウェスタン(イタリア製西部劇)などで活躍し、100本以上の作品に出演。
1966年『続・荒野の用心棒』、1968年『裏切りの荒野』、1970年『ガンマン大連合』、2011年には米テレビシリーズ「LAW & ORDER:性犯罪特捜班」出演。

最近では、2012年『ジャンゴ 繋がれざる者』、2017年『ジョン・ウィック:チャプター2』など。

映画『コリーニ事件』感想

本作品、2019年ドイツ上半期で興行成績が1番だったという予備知識もなく視聴したのですが、良かったです!
法廷ミステリー+人情+正義+歴史が詰まった作品。

ハリウッド映画のような大げさな演出はありませんが、さすが敏腕弁護士が書いた小説を元に作られているだけあって静けさの中にリアリティ感が溢れていました。

原作本の出版により、ドイツで現行する法律のスキャンダル性(落とし穴)が明るみになったもので、なんとその小説が機となり、2012年に政治家たちが動き始めた、というから驚きです。

すごいですよね!小説によって「事実は小説よりも奇なり」を証明してしまったような感じです。

*ここからネタバレ含みます!

映画『コリーニ事件』の正義というテーマ

コリーニ事件
写真出典:映画『コリーニ事件』公式サイト

監督のマルコ・クロイツパイントナーは、「正義というテーマ」に惹かれたそうですが、殺人事件の場合の正義と言えば、殺された被害者の無念を晴らすためにいかに被害者にとって満足できる判決を導き出す、というのが通常だと思います。

しかし、この映画での「正義=Justice」は、容疑者側のコリーニのものです。

ネタバレしてしまうと、イタリアに駐在していたナチスの若手リーダーだったハンス・マイヤーは、ドイツ兵が2名殺されたのを理由に無防備で丸腰のイタリア市民20人を家族らの目の前で銃殺します。その時に父親を殺されたのが、フィップリツィオ・コリーニ。

これが動機なのですが、本来であればハンス・マイヤーは戦犯として裁かれるべき人物。しかし、大企業のトップとして優雅な暮らしを送っていた。

どこに正義があるのか?法律は正義であるべきなのに、なぜマイヤーは裁かれなかったのか?

法律の落とし穴・ドレーアー法

映画の中で出てくる法律は、”秩序違反法に関する施行法”(通称:ドレーアー法)というもので、簡単に言ってしまうと戦争犯罪人の正犯と幇助犯(主格犯人の手助けをする人)を同視することを止めるための”恩赦”と”時効”に関するものです。*1

これは、1968年にナチ出身の検事エドワード・ドレーアー(Eduard Dreher)によって定められたものです。当時ドイツで刑法改正が大幅に行われていた際の目立たない状況の中で取り込まれたもので、戦争殺人罪を過失致死へ、そして公訴時効の期間を自動的に15年へと変更した法律。

ここでは「15年」という期間がキーで、法律には”ナチが敗戦を宣言した1945年5月5日から起算して15年”という一文が加えられており、つまり1960年5月5日の時点で全てのナチの幇助犯を訴追できなくなったということなのです。*2

映画の中であった、1968年にコリーニは、ハンス・マイヤーを告発するも時効になったため訴訟手続きを中止するという通知を受け取った、という部分はこの法律によるものです。

映画『コリーニ事件』のキャラクター設定

本作品の魅力はストーリーのリアリティ感そして、法廷ミステリー的な要素がある点だと思います。
さすが、作者は弁護士だけあって、事件を紐解いていく様子や法廷での弁護士のやりとりなどは本当の裁判を傍聴している気になりました

そして、キャラクター設定も良かった。
主人公の背景は、トルコ系移民。ドイツでは決してエリート街道は歩めない境遇でしょうが、そんな新米弁護士がひょんなことから国選弁護人を引き受けることになり、恩人の殺害容疑者を弁護という難しい事件を担当する設定にワクワクします。

裁判での対戦相手とも言える検事はかつての恩師。彼の「法廷に私情を挟むな。」という一言でコリーニの弁護を決めるわけですが、そこでも恩師相手に裁判で戦わなければいけず、弁護士としての成長していく様子などに、視聴者はいつしか映画の中にぐいぐい引き込まれていきます

恩人のマイヤーが少年時代の彼に対していかに優しく世話してくれていたか、という部分を強調しながら、戦争時のマイヤーの残忍さとを比較することで、いかに戦争が多くの人々に不幸をもたらしたのかを改めて考えさせられました。

単なる裁判ドラマではない!

一部の批評家たちの意見としては、最後コリーニが自殺したことで裁判ドラマとしての意味がなくなってしまう、という声も聞きましたが、あなたこそこの映画の意味が分かってない!と言いたいです。

私は、コリーニはマイヤーを復讐することに人生をささげてきたのだと思うのです。ドレーアー法によりコリーニの告訴は棄却され、この世に「正義」は無いんだ、と思った彼はマイヤーを殺すことをずっと考えてきた。(棄却後すぐ殺さなかったのは母や姉が自分たちが生きている限りはそんなことは絶対にさせない、と言っていたから)

カスパーが捜査する中その法律の問題点を公に暴いたことで、世間一般にその法律がいかに戦争被害者たちを苦しめ続けているのかを知ってもらうことだけでもコリーニは救われたという部分が重要、彼がどんな判決を受けるかは全く問題ではないのです。

コリーニを演じたフランコ・ネロのあの法廷を最後に去るときのカスパーを見るあの顔が全てを物語っているといえるでしょう。

まとめ

この映画の原作本の最後には、2012年にドイツ連邦法務省が「過去再検討委員会」を設置することを決定した、と記載されており、2020年の今、何か進展があったのか調べてみたのですが、日本語では情報が見つかりませんでした。

原作本は、日本語訳でも販売されており、若干200ページに渡る短い本ですが、映画とキャラクター設定が少しだけ違っています。原作者フォン・シーラッハの祖父は、べネス駐在のヒトラーの青年部の幹部で、戦後、幹部だった彼はニュルンベルク裁判で禁固20年の刑に処せられました。

そんな背景を知ると同時にフォンがこの物語を書くに至った動機などにも想像をめぐらせ、戦争はまだ終わっていないのだ、ということを痛感させられます。

映画『コリーニ事件』、2020年6月12日(金)からロードショー。

参考:
*1 https://www.haaretz.com/.premium-the-law-in-the-service-of-nazi-murderers-1.5227920

*2 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/18-3/010honda.pdf