『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』衣装にこめられた意味 あらすじとキャストと感想

2021年9月1日

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語

誰もが1つは子供の頃に何度も繰り返し読んだ本があるかと思いますが、私にとって「若草物語」はその1つ。
今回、この世界屈指の名作「若草物語」をグレタ・ガーウィグ監督が脚本を手がけ、4人姉妹を蘇らせた、ということなので、早速視聴し結局2回も観てしまいました!

本作品、第92回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞など6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞。

ここでは、映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』のあらすじ、キャスト、トリビア情報、ロケ地の紹介などをしつつ感想をお届けしたいと思います!

写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』作品情報

原題:Little Women

公開年:2019年

原作:「若草物語」著:ルイーザ・メイ・オルコット

監督・脚本:グレタ・ガーウィグ

出演:シアーシャ・ローナン、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、エマ・ワトソン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ、ティモシー・シャラメ

上映時間:125分

配給:ソニー・ピクチャーズ

映倫区分:G

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』あらすじ

ジョーはマーチ家の個性豊かな四姉妹の次女。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかりながら、小説家を目指して執筆に励む日々。

控えめで美しい姉メグを慕い、姉には女優の才能があると信じるが、メグが望むのは幸せな結婚だ。また心優しい妹ベスを我が子のように溺愛するも、彼女が立ち向かうのは、病という大きな壁。そしてジョーとケンカの絶えない妹エイミーは、彼女の信じる形で、家族の幸せを追い求めていた。

共に夢を追い、輝かしい少女時代を過ごした4人。
そして大人になるにつれ向き合う現実は、時に厳しく、それぞれの物語を生み出していく。

小説家になることが全てだったジョーが、幼馴染のローリーのプロポーズを断ることで、孤独の意味を知ったように─。自分らしく生きることを願う4人の選択と決意が描く、4つの物語。

引用:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』キャスト

長女メグ:エマ・ワトソン・・・結婚が女性の一番の幸せと信じる。芝居が上手。

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

次女ジョー:シアーシャ・ローナン・・・男勝りで小説家志望。

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

三女ベス:エリザ・スカンレン・・・自分の身体を省みず人を助ける優しい性格。ピアノが上手。

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

四女エイミー:フローレンス・ピュー・・・お金が幸せと信じるエイミー。絵を描くのが大好き。

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

母親:ローラ・ダーン・・・娘たちの個性を尊重する良妻賢母。夫が戦争で不在の中一家を守る。

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

マーチ大伯母:メリル・ストリープ・・・お金持ちで未婚。偏屈だが4人姉妹を温かく見守る。

『ストーリーオブマイライフ/私の若草物語』
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

ローリー:ティモシー・シャラメ・・・マーチ家の隣人で、非常に裕福なローレンス家の一人息子。

ジョン・ブルック:ジェームズ・ノートン・・・ローリーの家庭教師で後にメグと結婚。

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』感想

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語

写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

『レディ・バード』で監督・脚本を手がけ数々の賞にノミネートされたグレタ・ガーウィグが、今回は、米文学史上最も人気があるとされる19世紀の古典的名作「若草物語」に挑んだわけですが、見事に現代の新しい風を吹き込み21世紀に4姉妹を蘇らせました。

衣装にこめられた意味

ストーリーオブマイライフ/私の若草物語
写真出典:『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』公式サイト

まず、はじめに、衣装が素晴らしかったです!私の中にある4姉妹のイメージにぴったり!

この映画、一度目は物語を、そして二度目は衣装にフォーカスして観てみたりしてもいいかと思います!

衣装デザイン担当は、本作品でアカデミー賞衣装デザイン賞2度目の受賞となるジャクリーン・デュラン

彼女は、4姉妹にそれぞれの性格を反映させたパーソナルカラーを決め、キャラクターの個性を視覚的に分かりやすいようにしました。

保守的でロマンチックなメグには薄紫と緑、心優しいベスには淡いピンク、そしてオシャレなエイミーには明るい水色、そして、ボーイッシュで情熱的なジョーには赤やインディゴブルーを選択。

そして、母親(ローラ・ダーン)の衣装には、4姉妹のそれぞれの色をところどころに使っており、それは髪型にまで及んでいるそうです。

おてんばなジョー役を演じたローナンによると、一度もコルセットやペチコートを着けずにシンプルなウール素材のスカートを着ていたそうです。

そのお陰で動きやすくジョーの活発な性格を表現しやすかったとのことで、さすがジャクリーン・デュランですね。古典の中に違和感なく現代を持ち込んでいて、視聴者がすんなり物語に入っていけるだけでなく、理解がより深まるようにしています。

交錯する時間軸

「若草物語」は、1868年にルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説(ちなみに次女のジョーはオルコット自身です。)として発表され、続編として「続 若草物語」、「第三若草物語」、「第四若草物語」とあります。

映画では4姉妹が子供時代の「若草物語」と、ティーンから結婚するまでを描いた「続 若草物語」のお話が交錯する形でジョーを中心軸として描かれていますが、時が前後しても全く違和感を感じずスムーズに物語が進んでいきました。

そして、時を交錯させたことで、時として人生の残酷さが浮き彫りになってより現実味が沸き観ている私たちが共感できたのだと思います。

例えば、結婚に大きな夢を抱いていたメグが、ローリーの家庭教師だったイケメンのジョンと結婚し子供をもうけたものの、経済的に苦労しドレスの生地さえも買うのに迷う様子などは、リアリティ感があり過ぎましたね。

ロケ地

お話の舞台はマサチューセッツですが、撮影も同州で行われました。

また、4姉妹が暮らすマーチ家も作家オルコットの現存する家をもとに忠実に再現されており、外面は質素だけど一歩家の中に足を踏み入れると温かみがあるとても寛げる、本で読んだときに私が頭の中で思い描いていたマーチ家そのものでした。

素晴らしいキャスティング

一度「若草物語」を読んだことがある人なら4姉妹それぞれに対してイメージを持っているかと思いますが、今回のキャスティングはどうだったでしょうか?

私にとっては、ベスを演じたエリザ・スカンレンは、『シャープ・オブジェクト KIZU傷』のアマ役の記憶が新しいですし、四女エイミーを演じたフローレンス・ピューは、『リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ』で女性スパイ役の印象が強かったのでいまいちピンと来なかったんですよね。

しかし、杞憂に終わりました。

スカンレンは、感情を押さえ込み、病と闘う哀しみを表現しつつ実は芯が強いベスを演じきり、ピューは、子供時代は生意気な女の子、成長してからは上品な淑女になったエイミーを演じ、

まるで本の中から飛び出してきたかのようでした。

脇を固める役者陣

まず、ローリー役のティモシー・シャラメが美形過ぎて思わずため息が出てしまいましたが、ジョーに一途な想いを寄せる様子が健気でなんとも言えませんでした。

そして、メグの夫となるジョンを演じたジェームズ・ノートンもかっこよかった
ハッピー・バレー』のレイプ犯トミーのような極悪人を演じたと思えば、ごくごく平凡なジョンのような男性を演じても存在感があって、とても良かったです。

また、母親役のローラ・ダーン。
ビッグ・リトル・ライズ』のセレブ妻レナータのような気が強い役が最近多かったので、4姉妹の良妻賢母な母役が意外にもぴったりだったのでこの役者さんの奥の深さにびっくりです。

出番は少なかったけど、抜群の存在感があったマーチ大伯母を演じたメリル・ストリープ。
存在感と言っても目立っているという意味ではなくて、偏屈で気難しいけど、マーチファミリーを気にかける優しさを時々感じさせてくれて、戦争中で4姉妹の父親が不在中に安心感を与えてくれる存在が物語の中にあったのはいいですね。

19世紀に女性に選択肢があることを伝えた

私がこの映画を観て改めて感じたことは、女性にもいろいろな選択肢がある、ということです。すごいですよね。19世紀で女性の権利が守られなかった時代に書かれた本ですよ。

映画の中でエイミーが言うセリフで「女性は結婚したら全ての資産は夫である男性のものとなる」というのがあるのですが、そんな女性にとって苦悩の時代に作家オルコットは、4姉妹それぞれの生き方を通して、私たち女性には選択肢がある、ということを伝えたのです。

メグのように愛に生きるのもよし、エイミーのようにお金がある人生をもとめるのもよし、そしてジョーのように職業を持って生きるという人生もよし、というメッセージをこめていたのではないでしょうか。

そして、何が正解なんてない

ジョーが母親に

「女の幸せが結婚だけだなんて間違っている。でも、どうしようもなく孤独なの。」

というシーンは、思わず泣けてしまいましたね。

誰もが、自分が選んだ道は正しかったのか?これが私の理想だったのか?と時折不安になる。「あー、私だけではなかったんだ。」と19世紀のキャラクターに励まされている21世紀に生きる私。

だからこそ、この物語は不朽の名作で今でも多くの女性に愛される物語なのでしょう。

『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』ジョーの結末

ちなみに、原作の中ではジョーは結局結婚して子供を持ち学校を設立するという、仕事と家庭の両立をやってのけた、というキャラクターですが、原作者のオルコットは、一度も結婚せず子供も持ちませんでした。

グレタ・ガーウィグ監督によると、作者オルコットはジョーには結婚、出産もして欲しくなかったのですが、編集者がそれを許さなかった、という大人の事情があるようで・・・・ここら辺のトリビア情報に興味のある方はこちら→執筆中Coming soonをどうぞ。

『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』まとめ

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』は、私の大好きな映画リストに加わるほどの映画となりました。

役者陣の演技、美しい衣装、なぜかホッとさせてくれるマーチ家のおうちなど大道具や小道具たちも凝っていて素晴らしかった!

そして、心温まる物語であると同時に、現代に生きる私たち女性にとっても共感でき、そして元気が出る映画です。

母娘で一緒に観るのもいいかもしれませんね。
「若草物語」を昔何度も何度も読み返したように、何度も何度も観たくなる映画です。

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』は、2020年6月12日から全国順次ロードショー。

参考:The New Yorker,