映画『ハニー・ボーイ』あらすじ、キャスト、ネタバレ感想 シャイア・ラブーフの自伝なぜに高評価?題名の意味は?
映画『ハニー・ボーイ』がかなりの高評価ということで気になっていたので視聴しました。例のごとく特に前知識もなく観たのですが、父と子の屈折した関係を描いたとても重いドラマです。
本作品は、シャイア・ラブーフの自伝を元に作られており、彼自身も彼の父親役を演じ、子供時代のシャイア役にドラマ「 フレイザー家の秘密 (The Undoing)」のノア・ジョプが、成長したシャイア役にルーカス・ヘッジズという豪華な顔ぶれです。
ここでは、映画『ハニー・ボーイ』のあらすじ、キャストの紹介、ネタバレ感想、そしてシャイア・ラブーフの自伝が映画化されるまでのトリビア情報、題名の意味は?などを解説します。
映画『ハニー・ボーイ』作品情報
原題:Honey Boy
公開年:2019年
監督:アルマ・ハレル
脚本:シャイア・ラブーフ
出演:シャイア・ラブーフ、ノア・ジョプ、ルーカス・ヘッジズ、FKAツィッグス
上映時間:95分
配給:ギャガ
映倫区分:PG12
映画『ハニー・ボーイ』あらすじ
12歳のオーティスがテレビの人気子役として活躍し始めるようになった。するとオーティスの父親で前科者でアル中のジェームズが彼の保護者/マネージャーを務めるようになる。
ベトナム帰還兵の父親の暴力的な行動に振り回される毎日の中で「普通の親子関係」を望むオーティスは、苦悩を抱えたまま成長した・・・
映画『ハニー・ボーイ』キャスト
シャイア・ラブーフ(役名:ジェームズ)
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— Honey Boy (@HoneyBoyMovie) February 8, 2020
役柄:オーティスの父親/マネージャー。ベトナム帰還兵。アル中。
シャイアは現在34歳。ディズニーチャンネルの子役出身です。
映画『トランスフォーマー』三部作で主演し興行的にも大成功をおさめハリウッドの地位を確立。
また、映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』では、インディアナ・ジョーンズの息子役を好演しました。
その後も数多くの映画に出演していますが、度々起こす問題行動がメディアに取り上げられており、本作品で共演した後に付き合っていた元カノのFKAツィッグにDVで2020年12月に訴えられました。*2
ノア・ジョプ(役名:オーティス 12歳)
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— Regina King Stan Account (@AmazonStudios) February 25, 2020
役柄:子役スター。両親が離婚し父親と暮らしている。
現在15歳のノアですが、撮影当時は13歳。こんなに難しくてヘビーな役どころを13歳が演じていることに彼の今後のメンタルヘルスを思わず心配してしまった私ですが、両親も俳優なのでそこら辺はちゃんとケアされているのでしょう。見事な演技力の役者です!
映画『ナチス第三の男』でスクリーンデビューして以来まだ3年しか経っていませんが、既に数多くの作品に出演。
ジュリア・ロバーツ主演作映画『ワンダー 君は太陽』では主役の友人役、映画『フォードvsフェラーリ』では主演クリスチャン・ベールの息子役を好演しました。
最近ではニコール・キッドマンとヒュー・グラント主演の海外ドラマミニシリーズ「フレイザー家の秘密 (The Undoing)」で重要な役どころを演じています。
ルーカス・ヘッジズ(役名:オーティス 22歳)
— Lucas Hedges Updates (@LHedgesUpdates) October 31, 2018
役柄:俳優。3度目の飲酒運転で逮捕されアル中リハビリ施設に入所中。
ルーカスの父親は映画監督のピーター・ヘッジズ。
映画『ムーンライズ・キングダム』でスクリーンデビューしました。
以後、コンスタントに映画に出演しており、最近では映画『ベン・イズ・バック』でジュリア・ロバーツの息子でドラッグ中毒という難しい役どころを、また映画『WAVES/ウェイブス』で繊細な青年を好演しています。
ルーカス・ヘッジズ出演作品映画『WAVES/ウェイブス』あらすじ、ネタバレ感想 親にもティーンにもおすすめ!
映画『ハニー・ボーイ』ネタバレ感想
こんなにヘビーな内容だと思わず、海外ドラマ「フレイザー家の秘密 (The Undoing)」を観終わったばかりだったのでノア・ジョプが主演ということだけで視聴し始めました。
本作品でノア・ジョプは、12歳のシャイア・ラブーフ(映画の中の役名はオーティス)を演じており、父親ジェームズをシャイア・ラブーフが演じています。
ノアにとっては本人を目の前にしてさぞかし演りづらかったのでは、と思いましたがエレン・デジェネレスとのインタビューでは、シャイア自身にいろいろ当時の様子を質問することが出来たので演りやすかった、と語っています。
22歳のオーティスと12歳のオーティス
物語は22歳のオーティスが3回の飲酒運転で捕まり更生施設でのカウンセリングを受けている中で少年期を思い出す、という設定で過去と現在が交錯する形で進んでいきます。
過去のオーティスは12歳。テレビで人気が出始めた子役で父親ジェームズは自身がかつてパフォーマーだったこともあり、オーティスのマネジメントをしています。
しかし、この父親、最悪なんですよ。
オーティスだけでなく周りの職場の人間、そして、オーティスの離れて住む母親の希望で地域の子供の面倒をみるビッグブラザープログラムから派遣されたトムらにアル中で暴言、暴行を働く始末。
世の中に仕事をしている子役はたくさんいますが、オーティスの現状はとても子供が育つ環境ではないのですよ。すたびれたモーテル暮らしで勉強机もなければ子供部屋さえもない。そして、12歳の子供に平気でタバコを吸わせる。
もう、観ていて可哀想で・・・
こんな親の元で暮らすとどんなことになるのか・・・
ルーカス・ヘッジズが22歳のシャイアを演じているのですが、しょっぱなこういう台詞があります。
“I’m a professional schizophrenic. I’m a piece of sh*t,”
訳:オレはプロの統合失調症患者だ。オレはクソみたいな奴なんだ。
もうボロボロなんですよ。オーティスを診た心理学者は彼をPTSDと診断。
そりゃ、そうですよね・・・少年期にあんな育ち方をしていたら一生トラウマですよ。
父親ジェームズのトラウマ
#DGAawards winner for First-Time Feature Film is Alma Har’el for “Honey Boy" https://t.co/RxZiTmO2d8 pic.twitter.com/BAQznQZW1e
— Variety (@Variety) January 26, 2020
では、なぜオーティスの父親は彼にあんな仕打ちをしたのか?なぜ父親はアル中だったのか?
物語の中のAAミーティングでジェームズは自分の子供の頃のことを話します。
母親はアル中で麻薬中毒。家に居たくなくて志願してベトナム戦争に行きます。
皮肉ですよね・・・アル中の人間から逃れたくて戦争に行ったのに、戦争でのPTSDが原因でアル中になるっていう・・・
私の知り合いにベトナム戦争に行った人がいますが、彼もアル中です。今でも車のエンジンの爆音などを聞くとパニックになります。
悪のスパイラル。
ジェームズの母親からジェームズへ。そしてジェームズからオーティスへ。
ジェームズがオレの家系はアル中家系だ、と言ってましたが、もちろん遺伝的要素もあるのでしょうが、子供というのは知らず知らずのうちに目の前の大人の行動を真似して育ちます。
皆病んでいるのかも
観終わって世間の人々の評価を確認したのですが、本作品、2021年1月時点で辛口映画批評サイトRotten tomatoesでは94%、グーグルレビューでは4.7/5というハイスコアをたたき出しています。そこで、感じたのは「みんな病んでいるのかなぁ・・・」ということ。
映画とはある程度エンタメ性または共感するものがないとここまで高評価は得られないと思います。
本作品は、はっきり言いますがエンタメ性はゼロですので、残る高評価の理由としては多くの視聴者が共感したからではないでしょうか。
セラピーアート
〈痛み〉さえも抱きしめて、
少年は歩き出す――
━━━━━━━━━━━━試写会で絶賛❗️感動の声続出👨👩👧👦
「ラスト10分、号泣」
「やるせなくて、切なくて、
でも美しい、不器用な愛に涙」
「心地よい余韻が止まらない」🏆世界の映画祭絶賛&
賞レース席巻の感動作、8/7公開🎞✨— 映画『ハニーボーイ 』公式 |絶賛公開中! (@HONEYBOY_jp) July 22, 2020
本作品、監督のアルマがもともとドキュメンタリー映画出身というのもあるでしょうが、観終わった感想としてはフィクションというよりはドキュメンタリーに近いのでは、と思ってしまいました。
脚本はシャイア・ラブーフ自身が薬物アル中更生施設に入っている時に書いたもので、シャイアの親友である監督のアルマのインタビューで、この物語は多くの人々のカタルシス(浄化)になるのでは、と語っています。*1
きっと映画自体がシャイアにとってセラピーだったのではないでしょうか。自分を苦しめた父親のロール(役)をプレイすることで彼の立場からなぜ彼がそんな行動をとっていたのかをまず理解する。
アメリカでは3割のベトナム帰還兵がPTSDを経験しており、シャイアの父親も私達が想像を絶する経験をしてきたはずです。決して子供に対するDVを容認しているのではなく、なぜ彼がそんな行動をとったのか、を理解することで、息子がヒーリングするためへの第一歩を踏み出せるのだと思います。
『ハニー・ボーイ』題名の意味
ちなみに題名ハニー・ボーイの意味はシャイアの父親が実際に使っていた表現で、英語ではスィート・ハートなどと同じで愛情表現の一つです。
そうなんです。「愛情」
シャイアの父親は息子を愛していた。ただ、愛し方が分からなかった。表現出来なかった。
息子の手を人前で握れないシーンも本当に観ていて切なかったですね。
まとめ
本作品は、誰にでもおススメする映画ではありません。
ただ、父親や母親との関係に悩んでいる人にとってはひょっとしたら救いになり、カタルシスとなる映画かもしれません。
残念ながら、こういう問題は根深いもので一石二鳥で完治するものではありません。きっと、薬物依存者のように一生かかってトラウマを克服していかなくてはならないでしょう。
この映画がシャイアの救いになったかと思いきや、映画で共演した元カノのFKAツィッグに2020年12月にDVで訴えられました。シャイアも謝罪コメントを発表してますが、#MeTooムーブメントが盛んな中、この訴訟がシャイアの役者としての人生を終わらせてしまうのでは、と言われています。*2
どうか、シャイアが穏やかに暮らせる日が来ますように・・・
映画『ハニー・ボーイ』はU-NEXTで配信中です。
参考:
*1 https://deadline.com/2019/12/honey-boy-director-alma-harel-shia-labeouf-interview-news-1202807224/
*2 https://www.nytimes.com/2020/12/11/arts/music/fka-twigs-shia-labeouf-abuse.html
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