映画『ハナレイ・ベイ』あらすじ、キャストの紹介、ネタバレ感想!吉田羊の英語力と演技力

2021年5月7日

映画『ハナレイ・ベイ』

村上春樹の短編小説「東京奇譚集」の1篇を映画化した吉田羊主演の映画『ハナレイ・ベイ』を視聴しました!

他の出演者は俳優・村上淳さんの息子・村上虹朗、栗原類らですが、殆ど吉田羊の1人舞台と言っても過言でない、吉田羊出ずっぱりの映画です。

ここでは、映画『ハナレイ・ベイ』のあらすじ、キャストの紹介、ネタバレ感想、吉田羊の英語力についてなどをお届けします!

映画『ハナレイ・ベイ』作品情報

公開年:2018年

原作:「東京奇譚集・ハナレイ・ベイ」 著:村上春樹

監督・脚本:松永大司

出演:吉田羊、村上虹朗、栗原類、佐野玲於

上映時間:97分

配信元:HIGH BROW CINEMA

映倫区分:PG12

映画『ハナレイ・ベイ』あらすじ

ハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイで1人息子のタカシがサーフィン中にサメに襲われて亡くなったという知らせを受けたシングルマザーのサチ。

現地で息子を荼毘に付したサチは、息子が最期の時を過ごした海を見て数日過ごした。
それ以来、サチはタカシの命日にはハナレイ・ベイを訪れ、海を見て本を読んで過ごす、ということを10年続けていた。

ある日、サチは偶然出会った二人の日本人サーファー青年から「赤いサーフボードを持った右脚のない日本人サーファーがいる」と聞かされる。

映画『ハナレイ・ベイ』キャスト


吉田羊(役名:サチ)・・・シングルマザー。1人息子をサメの事故で失う。

佐野玲於(役名:タカシ)・・・母親と二人暮らし。

村上虹朗(役名:高橋)・・・サチとハナレイ・ベイで偶然出会う若者

栗原類(役名:尾崎亨)・・・サチの別れた夫でタカシの父親

映画『ハナレイ・ベイ』ネタバレ感想

本作品はハワイのカウアイ島のハナレイ湾が舞台。村上春樹の同名短編小説が原作で、村上春樹のフレーバーが全開の何とも不思議な雰囲気を醸しだしている映画です。

お話は、端的に言ってしまうと「サチの再生のお話」

息子をサメの事故で亡くした直後に現地のグリーフケア担当のスタッフが「息子さんの手形をとりませんか?」と薦めます。しかし「No」というサチ。

この亡くなった人の手形を取る、というのがハワイの風習なのかどうかは分かりませんが、かたくなに断っているサチに違和感を覚えます。

なぜ、何だろう。取っておけばいいじゃん。って誰もが思ったことと思います。

高橋との出会い

その後10年近く息子の命日には彼が命を落としたハナレイ・ベイを訪れ数日を過ごすサチ。

フラッシュバックでサチの現在とサチの息子が生きていた時のサチと息子の関係が紹介されていましたが、親子関係は良好とは言い難いが、二人で暮らしているので最悪ではない関係。

息子が死去してから10年経ったハナレイ・ベイでサチは、サーフィンで現地を訪れていた若い二人の日本人の青年らと知り合います。

1人でビーチを訪れ本を読んで夜は地元のバーでピアノを弾いているミステリアスなサチに興味を示した村上虹朗演じる高橋は「おばさん何者?」と訪ねます。そこでサチは「夢を持ってたけど挫折して、子供が出来て結婚して、夫はドラッグして他の女としている最中に死んじゃって、夫の保険金でピアノバーを開いて必死に働いて・・・」というようなことを言い、初めて視聴者もうわ~、壮絶な人生を送ってきたんだなと知ります。

元旦那は薬中でサチは乳飲み子を抱えている。

ところで、この元薬中毒の旦那は栗原類が演じており、台詞は殆どありませんが目がイッてしまっている感じとか、暴力的な様子とか、なかなか良かったです!

苦しむサチの脇で泣き喚く赤ちゃん。この赤ちゃんを見るサチの目が何ともいえないなんですよ。

嫌悪感。あんたがいなかったら・・・という目。

ここから書くことは全て私の解釈ですが、サチはそれをズルズル引きずって子育てをしていて、それが息子にも感づかれ、それが親子関係を悪くさせていたのですが、サチはそのこと自体には気づいていません。

こうやってわけのわからない怒りを内に秘めて長い間暮らしてきたサチ。

人間と言うのは相手が生きているうちは特にその相手と向き合ったりしないものです。特に血の繋がった相手とは。いつか話せる時がくるだろう、と思ってしまうものです。

しかし、人の命は本当にはかなく、事故で家族を奪われた人間は、心残りが多すぎてやり場の無い怒りや哀しみ、後悔がどっと押し寄せてきます。

サチもそうだったのではないでしょうか。

そこで高橋という、息子と同年代の青年と知り合い、会話を交わすことで、自分は息子のことを何も分かっていなかった。息子は彼女が抱えていた怒りや嫌悪感に気づいていたのだ、と悟るのです。

後悔と哀しみを昇華

サチが大木を押しながら号泣するシーンがあるのですが、どうにもならない変えることは出来ない過去を、動かすことはできない真実を、ああすることで昇華する様子を描いたのだと思います。

最後、サチはグリーフケア担当の女性がとって置いてくれた息子の手形に触り、初めて素直に彼への愛情表現が出来、お別れを言うことが出来ます。

現地の役者

ちなみにこのグリーフケア担当の女性は現地でグリーフケアを職業とされている方で役者さんではないそうです。

監督は、大勢の役者をオーディションしたそうですが、役者がやってしまうと大げさになってしまった、との事。

普段から生死に向き合っている人がやったから自然だった、とどこかのインタビューで語っていらっしゃいましたが普通素人がカメラの前に立つとどうしてもぎこちなさが出ます。特に日本人は自分の言葉で人前で発言することに慣れていませんので。

欧米人は普段から自分の言葉を持って語っている人が多く感じます。だからこそ、カメラの前でも臆することなく台詞が自分のものとなって演じることが出来たのではないかと思いますが、あの女性の言葉の全ては彼女と一心同体だったから自然な演技になったのでしょう。

吉田羊の英語力と演技力


バイリンガルでない俳優さんが英語を使って芝居をすると、必ず話題になるのがその役者さんの英語力です。

今回の吉田羊演じるサチは、ピアノ留学していたために英語が話せる、という設定。

どんな物語でもそうですが、ああいう役で英語がそんなに話せない、という設定だとかなりお話を伝えるということが難しくなるので「ある程度流暢に」という設定が多くなるのが実情でしょう。

で、吉田さんの英語力ですがとても上手でしたね。通常、演技が上手な人は語学力をアップさせるのもとても上手です。

そして、吉田羊さんの場合は、英語が上手い下手というより、演技を含めた全てを自分のものにされていたから、違和感がなかったのだと思います。

最近観た映画で日本人の俳優さんが英語を使って芝居をしていてダメダメだったのは『マチネの終わり』の石田ゆりこさんとその夫を演じた伊勢谷友介さん。

私は石田ゆりこさんの大ファンですが、正直演技派とは言えないと思います。映画の中で彼女は英語を話すのに必死という感じで全く台詞が自分の言葉になっておらず、彼女が英語を話すたびに違和感が・・・

そして、夫役の伊勢谷友介さんは、英語は流暢なのですが「発音がいい」というだけで、演技が大げさ過ぎて観ているこっちが恥ずかしくなりました。

私が言いたいのは、英語がペラペラとかはあまり問題ではなくやはりその英語の台詞を自分のものにしているかどうか、それが大きな違いなんだ、ということを今回の吉田羊さんの演技で分かったということです。

彼女の本作品での英語力は、彼女の演技力の賜物でしょう。

まとめ

全編97分、ハワイの大自然の中で1人の女性が少しずつ殻を破り、自分の怒りや哀しみ後悔と向き合い再生していく様子は、観ている私も癒された感じがします。

台詞は少なめで吉田羊の演技力が前面に押し出された映画で、観る人によって感じ方は変わってくるかと思います。

最後に「赤いサーフボードを持った右脚のない日本人サーファー」は幽霊だったのでしょうか?

私は幽霊だった、と思います。ここら辺は観ている人が判断して楽しめばいいのですよね。

映画『ハナレイ・ベイ』はアマゾンプライムでご覧になれます。