映画『カセットテープ・ダイアリーズ』あらすじ、ネタバレ感想 ブルース・スプリングスティーンの音楽が架け橋に!

2021年9月1日

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の原題は”Blinded by the Light”。ロック歌手、ブルース・スプリングスティーンのファンならあの名曲「光で目もくらみ」をすぐに思い出したことでしょう。

本作品は『ベッカムに恋して』の監督グリンダ・チャーダが手がけた実話に基づく音楽青春物語。ブルース・スプリングスティーンも映画製作に加わり、映画の出来に大満足しているとか。

ブルース・スプリングスティーンのファンはもちろん、私のようにそんなに詳しくない人でも楽しめ、とても幸せな気分にさせてくれるもう一度観たい!と思わせてくれた映画です。

ここでは、映画『カセットテープ・ダイアリーズ』のあらすじ、キャストの紹介、そして物語の中で使われているそれぞれのブルース・スプリングスティーンの楽曲名をご紹介しながらネタバレ感想をお届けします。

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映画『カセットテープ・ダイアリーズ』作品情報

原題:Blinded by the Light

公開年:2019年

監督・脚本:グリンダ・チャーダ

出演:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ジル、ディーン=チャールズ・チャップマン、ネル・ウィリアムズ、アーロン・ファグラ

上映時間:117分

配給:ポニーキャニオン

映倫区分:G

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』あらすじ

1987年、イギリスの田舎町ルートンが舞台。パキスタン系移民一家の2世に当たる高校生ジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)は、詩や文章を書くことが大好き。ハイスクールでは、経済学を薦める父親に内緒でライティングの勉強をしている。

閉鎖的な町に住み人種差別を受け、保守的な父親の言いつけを守ることに嫌気がさしていたジャベドだったが、ある日、校内で出会ったループス(アーロン・ファグラ)が貸してくれたブルース・スプリングスティーンのカセットテープを聴いて以来彼らの音楽にはまっていくジャベド。

ブルース・スプリングスティーンの音楽によってジャベドの人生が好転し始めたかのように見えたが・・・

 (C) BIF Bruce Limited 2019

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』キャスト

ヴィヴェイク・カルラ(役名:ジャベド)

ヴィヴェイク・カルラ
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

役:パキスタン系移民一家の1人息子。両親と姉と妹と暮らしている。文章を書くのが大好き。


イギリス、バークシャー出身の1998年生まれ。
Royal Welsh College of Music & Dramaを卒業後、2018年、ミニテレビシリーズ『Next of Kin』、2019年、ミニテレビシリーズ『Beecham House』に出演。

映画初出演となった本作品のオーデションでブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」(原題:Born to Run)を歌い、ジャベド役に選ばれる。本作品でシアトル国際映画祭主演男優賞にノミネートされた。

クルヴィンダー・ジル(役名:マリク・カーン)

クルヴィンダー・ジル
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

役:ジャベドの父親。若い時にパキスタンからイギリスに移住。保守的な考えを持つ。


ナイロビで生まれ、イギリスで育つ、1965年生まれ。
俳優、脚本家、そしてコメディアン。1987年、ブラックコメディドラマ『Rita, Sue and Bob Too』のアスラム役。1996年~1998年、コメディドラマ『グッドネス・グレイシャス・ミー』でお茶の間の顔となる。

ディーン=チャールズ・チャップマン(役名:マット)

ディーン=チャールズ・チャップマン
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

役:ジャベドの幼馴染で近所に住む。バンド活動をしている。


イギリス出身、1997年生まれ。
2009年~2011年、舞台『リトル・ダンサー』(原題:Billy Elliot)の主役ビリー役で活躍。
2013年、テレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』マーティン・ラニスター役、2014年~2016年に、同作品でトメン・バラシオン役で出演。

2014年『リピーテッド』のアダム役でスクリーンデビュー。2017年、映画『ブレス しあわせの呼吸』では、ジョナサン役。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』ネタバレ感想

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

Blinded by the Light”は本作品の原題でもありブルース・スプリングスティーンの同名楽曲であります。日本語タイトルは「光で目もくらみ」。

主人公のジャベドが初めてこの曲を聴いたとき、まるで身体中を電光が走ったかのような衝撃を受けます。
彼は、ブルース・スプリングスティーンの曲に出会い、まるで初めて自分の理解者に出会ったかのような気持ちになったのでしょう。

それ以来、ジャベドの生活はブルース・スプリングスティーン一色。
ブルースの詩の言葉通りに生きることで、勇気をもらい怖いものがなくなり前進するようになり、ジャベドの人生の局面局面にブルース・スプリングスティーンの音楽が寄り添うようになります。

Dancing in the Dark(ダンシン・イン・ザ・ダーク)

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

ハイスクールでライティングを勉強し始め、幼い頃から日記をつけ文章を書いてきたジャベドは自分のライティングに関して自信があったのでしょう。しかし、教師は「あなたの言葉が聞きたい」と励ますものの宿題のスコアが「C」であったことに落ち込みます。

また、町を歩いていればパキスタン系移民というだけで唾をかけられ威嚇され、明らかに人種差別的扱いを受ける日々。

現在2020年。1987年から33年も経っていますが、なんら変わりないことに愕然としますね・・・
未だに白人至上主義者たちは存在しますし。

そして、80年代のイギリスは金利の引き上げなどによって不景気真っ只中でした。ジャビドの父親もご多分に漏れず長年働いてきた自動車工場を解雇されてしまいます。

決して裕福ではない我が家の家計を心配し不安になるとともに、詩などを書いていることに何の意味があるのかと思いはじめたジャビドはフラストレーションから自分が書いた全ての詩を捨ててしまいます。

このストーリーラインは、とても共感できました
人生、どんなに頑張ってもなかなか前に進めない。そして、自分がやっていることって意味があることなのか?と結果が出ないことにイライラしてしまうことってありますよね・・・

しかし、ブルースの曲「Dancing in the Dark」(ダンシン・イン・ザ・ダーク)を聴き自分の怒りをぶちまけ発散したジャベドは、一度は捨てた自分の詩を拾い集め提出したことで、教師が彼の才能に気づき少しずつライターとしての道が開けてきます。

Thunder Road(涙のサンダー・ロード)

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

また、ブルースの曲「Thunder Road」(涙のサンダー・ロード)も彼に勇気をくれます。

「Thunder Road」を聴くことで、意中の女の子イライザ(ネル・ウィリアムズ)の気を引き、仲良くなることが出来ます。

ここは、イライザとジャベドとループスがミュージカルのように町を歌いながら踊りまくるシーンですね。

父親との関係

ジャベドが成長し変化してくると、今度は父親との間に摩擦が起き始めます。
保守的な父親は、息子には経済を勉強しユダヤ人たちのようにお金を作ることに長けて欲しいと願い、ライター業でお金が稼げるわけがないと決め付け応援してくれません。息子がこの町を離れるなどはもってのほか。

そんなときに、教師が応募した彼の作品がライティングコンテストで受賞し、ブルース・スプリングスティーンの故郷・アメリカ・ニュージャージーへ行くことになるのですが、父親は「行くなら勘当だ」と言い放ち、ジャベドは黙って荷物を持って家を出て行きます。

たった短期でアメリカに行くことがなぜ勘当という事態になるのか・・・それは、この父親がいったいどれだけ保守的か、というのを物語っていますが、親というものはいつまでも子供をそばにおいて置きたいもので、自分が経験した辛い思いを子供にはさせたくないという想いから、どの家庭でも子供に対して保守的になってしまうのかもしれません。

また、時代もあるでしょう。80年代は今とまったく違います。LINEはもちろんインターネットも携帯もない時代ですし、今の友達のような親子関係とはだいぶ違います。

INDEPENDENCE DAY(独立の日)

ブルース・スプリングスティーンは父親のことを詩にしていることが多いですが、この「INDEPENDENCE DAY」もその一つ。
また、アメリカ人であるブルース・スプリングスティーンにとっては独立記念日は特別なものでもあり、その想いと父親からの独立を謳った曲。

物語の中で、父親と決裂したままのジャベドは、ブルースの曲「Independence Day」(訳:独立の日)を聴きながら、父親の苦悩や苦労、そして両親が一体どれだけのものを犠牲にしてきたか、ということに気づき始めるのでした。

Blinded by the light(光で目もくらみ)

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』
写真出典:映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト

そして、ジャベドは、人間は1人では何も出来ないのであって周りの意見を聞くことも大事なんだ。そして、成功するために家族との間に壁を作って戦うのではなく自分の願望へ橋をかけることなんだと悟るのでした。

ブルース・スプリングスティーンの曲が彼と彼の家族の架け橋になってくれたのですね。

実話に基づく

本作品は、イギリスのジャーナリスト、サルフラズ・マンズールが2007年に出版した自叙伝『Greetings from Bury Park: Race, Religion and Rock N’ Roll』を原作としており、マンズールも実は脚本に携わっています。

まとめ

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』は、アラフォー、アラフィフの人たちにとっては、当時をふりかえって懐かしい気持ちになるとともにハッピーな気分にさせてくれる映画です。

そして、10代、20代の人たちにとっては、自分と全く価値観が違う大人たちとどう向きあいながら自分の夢をつらぬいていくのかを考える機会にもなるでしょう。

また、両親と一緒に観て、80年代の偉大な発明、ウォークマン・カセットテープ・巨大な携帯電話、そして派手なヘアスタイルやファッションなどの話で盛り上がる!なんていう楽しみ方も出来そうですね。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』は、7月3日(金)より全国ロードショー。