『ブラック・クランズマン』前代未聞の実話!あらすじ・感想・トリビア情報も
3月22日公開の『ブラック・クランズマン』を一足お先にオークランドで観てきましたので、感想です。
この映画、新人黒人警察官が白人至上主義秘密結社(KKK)に潜入捜査をする、という実話に基づいたお話です。
で、ふと思いませんか?黒人がどうやって白人大好きグループに入り込むのか??
そう思ったら、もうフックされたも同じです。(^^;;
ぜひぜひ、観て下さい。後悔しません!
『ブラック・クランズマン』作品情報
原題:BlacKkKlansman
公開年:2018年
監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デビッド・ワシントン(ロン・ストールワース)
アダム・ドライバー(フリップ・ジマーマン)
ローラ・ハリアー(パトリス・デュマス)
トファー・グレイス(デビッド・デューク)
ヤスペル・ペーコネン(フェリックス)
上映時間:135分
映倫区分:G (「どなたでも」のGですが、うーん、高校生以上が適当かなぁ・・・)
主役のロン・ストールワース役を演じているのは、ジョン・デビッド・ワシントン。あのデンゼル・ワシントンの息子です。スパイク・リー監督の作品にはお父さんが出ていた映画の端役として登場して以来の出演です。その後はアメリカンフットボール選手として活躍していたのですが、アメリカンフットボール題材にしたテレビドラマ『Ballers/ボウラーズ』(2015年~2018年)に出演し、役者としてトレーニングを受けた訳ではないのに、やはり蛙の子は蛙と言いますか、彼の演技はもちろん、作品も高評価を得て4シーズン続きました。
アメリカのテレビ業界は、容赦がないので4シーズン続いたのはすごいですから、作品にも恵まれたんですね。
そして、フリップ・ジマーマンを演じるアダム・ドライバーは、スターウォーズファンの方でしたらすぐ気付かれましたよね。赤い十字架の形のライトセーバーを操るカイロ・レンを演じたことで有名ですね。
スパイク・リー監督は、1980年代から活躍する監督であの大きなメガネがトレードマーク。有名な作品は、「マルコムX」、「オールド・ボーイ」などがあります。
『ブラック・クランズマン』あらすじ
舞台は1970年代のコロラド。コロラド州警察の新人警官となった黒人ロン・ストールワースは、新聞広告で白人至上主義秘密結社KKKの広告を見て、*白人のフリをしながら、自分がいかに黒人が嫌いなのかをアピールして加入したいとKKKのリーダー、デビッド・デュークに電話する。
上手くKKKのリーダーを騙しこめたロンは、ユダヤ人系白人警官のフィリップと組んでKKKへの潜入捜査を開始。秘密結社が企む危険な悪事を彼らがどうやって立ち向かうのか・・・
*黒人と白人では英語のイントネーションがだいぶ変わりますので、ロンはアクセントを使い分けるのが得意だったのですね。
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『ブラック・クランズマン』感想
スパイク・リー監督は、一環して人種差別問題・銃規制問題・政治について、自分の意見を恐れることなく発言し続けてきていることで有名ですが、今回の作品、『ブラック・クランズマン』も、人種差別問題を掘り下げた映画です。
そう言ってしまうと、シリアスな印象を持たれてしまうかと思いますが、ところどころにユーモアが散りばめられていて、かなり笑える映画でもあります。
このユーモア、はっきり言ってしまうと黒人監督だから出来たもので、白人監督がやったらかなり批判を受けるのかなぁ。という気もしますが、もちろんKKKのリーダー、デビッド・デュークをコケにしたり、ロンが電話した時に思いっきり自分の名前を言ってしまったり、KKKのメンバーのクレイジーぶりを描いていたりする部分もめちゃくちゃ笑えます。
それでも潜入捜査ですので、ハラハラドキドキする場面も。
特にロンの相棒、白人警官のフィリップがロンのフリをしてるわけですが、かなり過激なKKKのメンバー、フェリックスに身元がバレそうになるところなんて緊迫感が漂いました。
ここでですが、しきりにKKKのメンバー、フェリックスが、潜入捜査をしている白人警官のフィリップのことをなぜか疑い「お前ユダヤ人だろ。男の一物をみせろ。」と言う場面があるのですが、これは知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、ユダヤ人の男の子は生まれてから8日目に割礼を行う風習があるんですね。それで、見せてみろ、と言ってるのですが、いや~もうこう言ってる時点でかなりヤバイ人間ですよね~。。。
映画の中盤からは、KKKのクレイジーぶり(実際にあったことですが)が描かれ、後半は思わず身を乗り出して観てしまうくらい、ハラハラドキドキで画面に食いついてしまいました。
そして、映画の中には歴史上実際にあったこと、どれだけ黒人が迫害にあったかをストーリーに組み入れています、そして最後には2017年に人種差別により1人の方が亡くなった事件のドキュメンタリーも含まれています。
この作品、2019年2月の第91回アカデミー賞では6部門がノミネートされ、結果、脚色賞を受賞し、本命の作品賞は「グリーンブック」に取られてしまったわけですが、その作品賞発表の時に、「グリーンブック」の名前が読み上げられると同時、スパイク・リー監督は怒りを顕わにし会場の外に飛び出したとか。
このことを聞いた時は、まだ本作品を観る前で(「グリーンブック」は観ていた)ので、「なんだかなぁ~。子供が賞取れなくて癇癪おこしているみたい~。」と思ったのですが、この『ブラック・クランズマン』を観て、スパイク・リー監督の行動に納得してしまいました。それだけの思い入れが監督にはあって、今のこの狂った現代社会には、生ぬるく「人種差別はいけないよ~。」では、済まない、ということなのかもしれません。
映画を観終わって思ったことは、この映画の舞台は1970年代で実際にあったことをベースに作られたわけですが、この2019年の今、社会は何も変わっていないのだな、ということです。いや、悪くなっているのかもしれない。
この記事を書いている1週間前に、私が住むニュージーランドではある一人の白人至上主義者によりイスラム教徒をターゲットにしたテロがあり50人が亡くなりました。
何十年経っても何も変わってないのです。
こういうクレイジーな人たちの頭の中を変えることは出来ないのかも知れないけど、私達は目を見張って、自分達の住むこの世の中で一体何が起こっているのか、まずは知ることなのではないでしょうか?
「グリーンブック」も人種差別を扱った映画で、確かに「グリーンブック」は感動しましたが、後味が良過ぎる感は否めません。この『ブラック・クランズマン』は、観終った後、何日も人種差別問題についてふと考えてしまいますし、もっともっとこの問題には深い闇があるような気がしてなりません。
スパイク・リー監督は、「どこか現代を連想させる作品にしなくちゃいけない。観た人が、映画のなかの狂った世界を現代のぼくらが生きる世界につなげて考えられるようにね」と言っていたそうです。
この下のトリビア情報は、少しネタばれも含んでますので、映画を観終わってから読んでいただくと面白さ倍増です♪
『ブラック・クランズマン』トリビア情報
- ジョン・デビッド・ワシントンが演じたロン・ストールワースもアダム・ドライバーが演じたフリップ・ジマーマンも実際に実在した人物で、この映画はロン・ストールワースの本を元に作られた映画ですが、実際のところフリップ・ジマーマンの本名・身元は、KKKで潜入捜査をしていたことから明らかにはされていません。また、ユダヤ人というのは映画の中での設定になります。
- 「BlacKkKlansman」は警察を引退したロン・ストールワースによって書かれ、2014年に出版されました。
- 映画の最後にKKKへの潜入捜査が打ち切られるわけですが、実際に、軍部の上の人物がKKKのメンバーだった、というようなことがあったようです。
- 映画の中でロンが間違えて自分の本名を名乗る、という場面がありますが、実際に名乗ってしまったそうです。(実際は電話ではなく手紙だった)で、その後にKKKから電話がかかってきた。
- KKKのリーダーを演じたトファー・グレイスは、インタビューの中で「私はあの時欝状態だった。」と述べた。丁度映画の撮影中に娘が生まれた時のことを思い出しながら「私はあの時多分ひどい夫だったと思う。家へ帰ってテレビのニュースを見る度に、KKKのリーダーのイデオロギーが今のこの現代でどれだけの人々に悪影響を与えてきたのかを考えると、不安に駆られた。」と。参考:『ブラック・クランズマン』公式サイトインタビュー、IndieWire
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