エリザベス・ストラウト原作ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』は評判通り!あらすじ、キャストの解説と感想

2021年9月1日

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』

ピュリッツァー賞受賞のエリザベス・ストラウト原作『オリーヴ・キタリッジの生活』をドラマ化したミニシリーズ全4話『オリーヴ・キタリッジ』をやっと観ることが出来ましたが、評判通りで大大大満足です!

主人公のオリーヴには、演技の三冠王を受賞しているフランシス・マクドーマンド、その夫ヘンリー役には、本作品でエミー賞を受賞したリチャード・ジェンキンス。

ここでは、ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』のあらすじ、キャストのご紹介、そしてネタバレ感想をお届けします!

写真出典:『オリーヴ・キタリッジ』アマゾンプライム

『オリーヴ・キタリッジ』あらすじ

オリーヴ・キタリッジは、人間不信で他人に厳しい数学の教師。

アメリカ・メイン州の小さな海沿いの街に、優しく思いやりのある薬剤師の夫・ヘンリー・キタリッジと反抗期の息子クリストファーと住んでいる。

オリーヴとヘンリーとの25年の結婚生活を通して、彼らを取り巻く人間関係の物語が穏やかに、面白く、そして時として残酷に描かれる。

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』キャスト

フランシス・マクドーマンド(役名:オリーヴ・キタリッジ)

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』
写真出典:『オリーヴ・キタリッジ』アマゾンプライム

中学校の数学教師。薬局を営むヘンリーと1人息子のクリストファーと海沿いの家で暮らしている。


シカゴ出身、1957年生まれ。

1984年、コーエン兄弟監督の『ブラッド・シンプル』でスクリーンデビュー。同年にデビュー作品の監督・ジョエル・コーエンと結婚し、ハリウッドにしては珍しく2020年で結婚生活36年を迎える。

1989年、『ミシシッピー・バーニング』でアカデミー助演女優賞に初ノミネート。

1996年の『ファーゴ』でアカデミー賞主演女優賞を初受賞。その後、2017年の『スリー・ビルボード』で2度目のアカデミー賞主演女優賞を獲得。

舞台でも活躍。2011年、『Good People』でトニー賞主演女優賞 、そして、2015年本作品『オリーヴ・キタリッジ』で、エミー賞主演女優賞を受賞し、演劇の三冠王(アカデミー賞・トニー賞・エミー賞)を達成

リチャード・ジェンキンス(役名:ヘンリー・キタリッジ)

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』
写真出典:『オリーヴ・キタリッジ』アマゾンプライム

街中で薬局を営む、オリーヴの夫。優しく、思いやりがあって誰からも好かれる。


イリノイ州出身、1957年生まれ。

1985年『シルバラード』でスクリーンデビュー。2001年、テレビシリーズ『シックス・フィート・アンダー』、1988年『リトル・ニキータ』、2004年『 Shall We Dance?』、そして、2008年の『扉をたたく人』でアカデミー主演男優賞に初ノミネート。

2015年、本作品『オリーヴ・キタリッジ』で第67回エミー賞主演男優賞を受賞。

ジョン・ギャラガー・Jr(役名:クリストファー・キタリッジ)

オリーヴとハリーの1人息子。


デラウェア州出身、1984年生まれ。

2003年『エイプリルの七面鳥』でスクリーンデビュー。2002年、テレビドラマ『ロー&オーダー』に出演。
ロックミュージカル『Spring Awakening』でトニー賞受賞

ビル・マリー(役名:ジャック)

70代になったオリーヴとひょんなことから友人に。妻を亡くしたばかり。


イリノイ州シカゴ出身、1950年生まれ。

1979年『ミートボール』でスクリーンデビュー。1984年、話題作『ゴーストバスターズ』 ピーター・ヴェンクマン博士役で知名度がぐんと上がる。

1989年『ゴーストバスターズ2』、2000年『チャーリーズ・エンジェル』のジョン・ボスレー役。

2003年の『ロスト・イン・トランスレーション』では、英国アカデミー賞主演男優賞受賞・ゴールデングローブ賞 主演男優賞受賞。

2021年には、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の公開が控えている。

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』感想

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』
写真出典:『オリーヴ・キタリッジ』アマゾンプライム

*ネタバレ含みます!

『オリーヴ・キタリッジ』は、アメリカの北東部のメイン州のクロズビーという架空の町が舞台。

1話目が始まると同時にすうっとその町に足を踏み入れたような気になるのはなぜだろう。とっても居心地の良い街です。

本作品は、リサ・チョロデンコ監督が、40代の1人の女性オリーヴ・キタリッジの心の機微を約4時間のミニシリーズにまとめたもの。

オリーヴは、中学の数学教師でまさに古いタイプの「ザ・教師」という人物で、規則に厳しく、子供たちの躾にも厳しい。

一見、性格悪い偏屈女性かと思いきや、時にすごく落ち込み鬱状態になったり、時に攻撃的なまでに歯に衣着せぬ発言で人を黙らしてしまう一方、面倒見がいいところもあったり、子供っぽいユーモアを持ち合わせていたりもする。

私、恥ずかしながら、フランシス・マクドーマンドの作品を見たのは本作品が初めてで、あまりの女優っぽさゼロ感に、演技3冠を達成したほどの演技派だとは知りませんでした。

と、思ったのも束の間、ドラマの中では、もうフランシスではなくてオリーヴ・キタリッジでした。

これを観た人は皆きっとフランシスの性格の悪さに顔をしかめてしまうかもしれないけど、同時にもっとフランシスの事を知りたくなって目が離せなくなるかと思います。

オリーヴの夫役には、 ベテラン俳優のリチャード・ジェンキンス。そして、70代に突入したオリーヴが出会う友人ジャックにビル・マリーといった演技派が脇を固めています。

小説の中の風景・人物・セリフたちが、生き生きと動き出した

冒頭で言ったように、本作品は、米国で最も権威ある文化芸術賞ピュリッツァー賞を受賞したエリザベス・ストラウト原作の『オリーヴ・キタリッジの生活』をドラマ化したものですが、原作を読んだことがある私ですが大満足です。

ドラマを見始めてすぐに、小説の中で私が思い描いていた風景・人物・セリフたちが、まるで、生き生きと動き出したかのような気持ちになりました。

オリーヴの四半世紀

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』
写真出典:『オリーヴ・キタリッジ』アマゾンプライム

このミニドラマシリーズは、全4話から成り立っていますが、それぞれのお話がオリーヴとヘンリーの人生の節目で成り立っていてます。

1話、40代のオリーヴはまだ人生真っ只中で色気があったり、ヘンリーも雇った女性店員の若さにときめいたりする。

2話、50代のオリーヴは息子クリストファーの結婚に浮き足立つも義理の家族とはとても上手くやれそうにない。

3話、60代のオリーヴとヘンリーは、予期せず死と向き合う事件に巻き込まれる。

4話、70代のオリーヴは、ヘンリーとの死別に耐えられなくなるも、ジャックを放っておけない。

オリーヴの性格とうつ病

オリーヴの父親は、うつ病のため銃で自殺しており、オリーヴは自分はうつ病だと思っています。

ただし、私が思うに、オリーヴはうつ病というより人間不信

それは、父親の自殺からくるもので「自分は捨てられた」という感覚からきているのではないでしょうか。だから、人間嫌い。

またこの映画の面白い点は、オリーヴ取り巻く人々との関係によって、オリーヴ・キタリッジという女性がどういう人間なのかが浮かび上がってくる様子です。

例えば、2話で自殺しに故郷に帰って来たケヴィンの気持ちにオリーヴはすぐ気づき、ぶっきらぼうに叱咤しながら自殺を食い止めたり。

4話では妻を亡くして元気がないジャックを放っておけずに面倒見たり。

といった具合に彼女の世話好きな面が現れたかと思えば、同時に、近所の子供たちに「魔女」と言われてしまうような厳しい彼女の別の顔が現れたりといった具合に、周りの人物が上手にオリーヴ・キタリッジの複雑な性格を表現してくれます。

大笑いもできる

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』
写真出典:『オリーヴ・キタリッジ』アマゾンプライム

そして、このドラマ、意外や意外、大笑いできるシーンも多々あるのです。

息子の結婚式の場で盗み聞きしてしまった嫁の自分への悪口の仕返しに、靴を片方、イヤリングを片方、こっそりと盗んで子供のようにニヒヒと笑うフランシスの演技には大笑いです。

なぜか共感

オリーヴは常に不満そうですが、彼女の環境はどちらかと言うと恵まれています。

薬局を経営する優しい夫に1人息子。その息子は成長して足の専門医になり、薬局は大手チェーンに良い値段で売却でき、家は海沿いの良いロケーションに建っていて、賃貸物件も所有。

はっきり言えば、誰もが羨むシチュエーションなのに、オリーヴはハッピーではない。
そこで、ふと渡し、奇妙な俯瞰感覚を覚えました。

私はドラマを通してオリーヴの人生を覗いているのだけど、同時に私が私の人生をも覗いている感じ。

知らないうちに、なぜか自分の人生と重ねて共感してしまっていたのです。

80年代を思わせる小さな町並みやオリーヴとヘンリーの古びた家。なぜか昔文通をしていたアメリカに住む彼女のことをふと思い出してしまいました。

この映画は、人生の酸いも甘いも経験した大人のための映画です。

ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』は、アマゾンプライムでどうぞ。


ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』を気に入ったら、ぜひぜひ本「オリーヴ・キタリッジの生活」も読んでみてください。

本ではオリーヴの周辺の人たちの背景が分かってきて、あー、こういうことがあったからこうなのね、という感じでまた別の楽しみ方が出来ます。