『ボッシュ』シーズン5はアメリカのオピオイド問題をあぶり出す
2019年4月19日からAmazon プライムで海外ドラマ『BOSCH/ボッシュ』シーズン5が一気に10話配信されたばかりですが、シーズン4が放送される前にシーズン5の更新を決定したように、今回もシーズン5が配信される前の2018年11月にシーズン6の更新を決定しました~!!
パチパチパチ~!めでたいっ!
『BOSCH/ボッシュ』は、アメリカのベストセラー作家マイケル・コナリーのメガヒット小説「ハリー・ボッシュ・シリーズ」を原作とした犯罪捜査ドラマで、ロサンゼルス市警の一匹狼刑事ハリー・ボッシュが主人公。
この『BOSCH/ボッシュ』シーズン5の詳しいあらすじや感想などは下記の関連記事をぜひ読んでいただくとして、ここでは、シーズン5のメインのストリーラインとなる「アメリカのオビオイド問題」についてお話します。
この「アメリカのオビオイド問題」を少しでも知っておくことで『BOSCH/ボッシュ』シーズン5が何倍も楽しくなること間違いなし!
それでは、分かりやすいように説明していきます。
アメリカのオピオイド問題
『BOSCH/ボッシュ』シーズン5で、巧妙なオピオイド薬の大量処方(ピルミル)という箇所がありますが、これはこのドラマの中で作られたフィクションではなくて、実際にアメリカが直面している大きな問題なのです。
では、まず「オピオイド」って何なの?というところから説明し、一体どのようにアメリカ国内に蔓延していったかをお話します。
オピオイド(フェンタニル)って何?
オピオイドは、ケシの実から生成される麻薬性鎮痛薬いわゆる痛み止めとして処方される薬の総称で、モルヒネ・オキシコドン・ハイドロコドン・そしてフェンタニルなどの薬名で知られます。
それぞれの違いは、アヘンから純に生成され一般的に日本でも良く鎮痛剤として使われているのがモルヒネ。そして、モルヒネに合成物質が少し混じった半化学合成物がオキシコドン・ハイドロコドン。そして全ての成分がモルヒネに似せた合成化合物質なのがフェンタニル。
この合成化合物質フェンタニルがモルヒネの50〜100倍の鎮痛効果をもたらすとされているのです。めちゃくちゃ怖いですね・・・
副作用として、吐き気や呼吸困難、意識を失うなどが報告されており、脳の喜びをコントロールする箇所が刺激されるそう。
そして、中毒性もあるが為に常習者は過剰摂取をする傾向にあり、2017年では2万人、つまり1日に46人のアメリカ人の命を奪ったとされているのです。
フェンタニルで亡くなられた有名人では、ロック歌手のプリンス(Prince)やトム・ペティ(Tom Petty)が記憶に新しいことでしょう。
フェンタニルはパワフル
フェンタニルは様々な形で流通されており、処方箋があれば痛み止めとして合法的に手に入れることが出来ますが、問題は先ほども述べたようにそのパワフルさ。
『BOSCH/ボッシュ』シーズン5でこんなシーンが。
麻薬集団が以前使っていたとみられるアジトを家宅捜査中。
道具箱のようなものを捜査員の一人が見つけその蓋をあけたところ、中にフェンタニルの残骸が少量残っていた。その捜査官はその蓋を開けた瞬間に呼吸困難の症状に見舞われる。
これは、決して大げさな演出ではなく、フェンタニルがいかにパワフルであるかを上手く表現しているんですよ~。
以下は疾病管理予防センターによるグラフで、どのタイプのオピオイド薬が過剰摂取による死亡の原因となったか、またその死亡数を表していますが、グラフを見ていただくと分かるように紺色の線、Other synthetic Opioids(他の合成化合物質)e.g. fentanyl・ tramadol(例:フェンタニル・トラマドール)のところが2016年からほとんど直角に急激に上昇しているのです。
フェンタニルの流通経路
フェンタニルの流通経路は、
『BOSCH/ボッシュ』シーズン5では、麻薬集団が、悪徳な医者を使いその医者が常習者達に処方箋を書いてオキシコドンなどを入手しているのですが、麻薬集団は常習者にはぎりぎりの薬を渡し、残りは高い値段で転売している。というストーリーライン。
ほぼアメリカの現状もそんな感じであるようで、実際にアメリカでのフェンタニル関連の逮捕は2013年から2014年の間で426%も増加。
アメリカのスターバックスのトイレに針廃棄ボックスが!
Photo by Darien Law
スターバックスがなんと!使用済みの針廃棄ボックスをお店のトイレに常置することにしたそう。
以前から、スターバックスのトイレではオピオイド常習者が麻薬で使用した針をゴミ箱などに捨てており、店のスタッフがトイレを掃除した時に誤ってその針で指や足を刺してしまったりという事件が報告されていました。
なぜ、他のファーストフードやコーヒーショップでは問題にならずスターバックスでは問題になっているか?というと、他のお店はお客以外の人にはトイレを使わせないか、使わせる際でもいちいちスタッフからトイレの鍵をもらって使用する、というのが欧米では一般的。
一方スターバックスでは大企業として「ホームレスをサポートする」という姿勢を見せたのが仇となったのです。
スターバックスがホームレスサポートにポリシーを変えて以降、誰でもトイレを利用出来るようになり、シアトルのスターバックスでは、殆ど毎日のように注射針を見かけ、HIVや肝炎から身を守るためにスタッフは抗ウィルス薬を使用しなければならない状況にあるというのです!
しかし、針廃棄ボックスを常置したところで、麻薬常習者がいちいちちゃんと廃棄ボックスに使用済みの針を捨ててくれるのだろうか?と思うのは私だけでしょうか??
まとめ
アメリカの大統領トランプは、このオピオイド問題を公衆衛生緊急事態とし、アメリカ合衆国保健福祉省に対して緊急に対処するように求めたということですが、予算が厳しい状況の中で一体どこまでトランプ大統領がやってくれるのか・・・
どちらにしても、『BOSCH/ボッシュ』シーズン5を見ることで、こういうアメリカの現状問題も勉強できちゃいます。
オピオイド問題を少し勉強して思ったことは、『BOSCH/ボッシュ』シーズン5が大げさに描かいているわけではないということ。
これがアメリカの実態なのだ、という点に留意してドラマを見てみると、少し見方も変わりリアリティ感が増しドラマが更に理解しやすくなるのではないでしょうか。
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